ワーキングメモリとは?
日常での役割と鍛え方をやさしく解説
「あれ、いま何をしようとしてたっけ?」——その瞬間に働いていた(そして途切れた)のがワーキングメモリです。脳の“作業机”とも呼ばれるこの力を、やさしく解説します。
ワーキングメモリ=脳の「作業机」
ワーキングメモリ(作業記憶)とは、情報を短時間覚えておきながら、同時にそれを使って作業する脳の働きです。よく「脳の作業机」にたとえられます。机が広ければ資料を並べて効率よく作業できますが、狭いと資料を置ききれず作業が滞る——そんなイメージです。
たとえば、こんな場面で働いています。
- 会話:相手の話を覚えておきながら、返事を組み立てる
- 暗算:「27+48」の繰り上がりを覚えながら計算を進める
- 料理:レシピの手順を頭に置きながら、複数の作業を並行する
- 読書:前の文の内容を保持しながら、次の文を理解する
容量には限界がある
ワーキングメモリで一度に扱える情報量はごくわずかで、数個程度(研究では4±1個前後という説が有名)と言われます。電話番号を聞いてすぐ忘れるのは、あなたの記憶力が悪いのではなく、そもそも人間の仕様なのです。
だからこそ、情報を「かたまり(チャンク)」にまとめる工夫が効きます。「0901234…」を1桁ずつではなく「090」「1234」と区切って覚えるのがまさにそれ。記憶力の記事で紹介した関連づけも、チャンク化の応用です。
ワーキングメモリを使う・鍛える
ワーキングメモリに意識的に負荷をかける課題として、研究の世界でもよく使われるものがいくつかあります。当サイトでは、それらを遊びやすいゲームにしています。
Nバック課題
次々に光るマスの位置が「N回前と同じか」を判断し続ける課題。「覚える・更新する・判断する」を同時にこなす、ワーキングメモリ訓練の代表格です。→ Nバックで挑戦
逆唱(逆順記憶)
見た数字を「逆から」答える課題。ただ覚えるだけでなく、頭の中で並べ替える操作が入るため、知能検査でも使われる形式です。→ 逆順記憶で挑戦
デュアルタスク
「数字を覚えたまま計算を解き、あとで思い出す」という二重課題。日常の“ながら作業”に近い負荷がかかります。→ デュアルタスクで挑戦
トレーニングの効果がどこまで日常に波及するかは研究途上ですが(こちらの記事参照)、これらの課題が「短時間で頭をフル回転させる質の高い刺激」であることは確かです。
日常でワーキングメモリを助ける工夫
鍛えると同時に、「負荷を減らす」工夫も同じくらい大切です。
- 書き出す:ToDoやメモに“外部化”すれば、机の上が広く使えます。
- 一度にひとつ:マルチタスクはワーキングメモリの最大の敵。作業は分けて順番に。
- 睡眠をとる:寝不足の脳は、作業机が半分になったようなもの。
- 中断をメモしてから離れる:作業を中断するときに一言メモを残すと、「何してたっけ?」が防げます。